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コーヒーチェリーから生豆を取り出す「精選」とは。方式や味わいの違いを解説

コーヒー豆ができるまでに欠かせない工程のひとつが「精選」。コーヒーの実を収穫した直後の工程のため、一般的にあまり知られていない精選ですが、コーヒーの味の違いも左右する大切な工程のひとつです。この記事では、精選の意味や内容、世界の代表的な精選方法を紹介します。

1.コーヒーの精選とは

収穫したコーヒーの実(コーヒーチェリー)から、生豆を取り出す作業を精選と呼びます。コーヒー豆を製造する過程のなかで精選が持つ役割を具体的に紹介します。

精選はコーヒー豆を作る大切な工程のひとつ

コーヒー豆は、コーヒーの木になる真っ赤な実、コーヒーチェリーから作られます。コーヒーの生豆ができるまでの大まかな工程は、次の4つです。

1.栽培
2.収穫
3.精選
4.選別

収穫したコーヒーチェリーは、実の中に果肉や外果皮、種子が入っています。この種子を取り出す工程が精選で、取り出された種子がコーヒーの生豆です。実はコーヒーチェリーはその状態で長く保存ができず腐敗し始めてしまうのですが、生豆の状態にすることで長期の保存や輸出入などの運搬が可能になります。

精選したばかりの生豆は形にばらつきがありますが、その大きさを整えたり欠点豆と呼ばれる不良な豆を取り除いたりするのが次の工程の選別です。

精選方法によって味わいも変わる

精選にはさまざまな方法があり、その方法や内容によってコーヒーの味わいに違いが出ます。精選は、原料の品質とコーヒーの味を決定づける重要な工程です。精選方法による味わいの違いを知ると、コーヒー選びの幅がさらに広がりますよ。

2.コーヒーの代表的な精選方法

コーヒーの精選方法は栽培地域などで異なり、さまざまな種類があります。ここでは代表的な4つの精選方法について、その特長と味わいを紹介します。

コーヒーの精選方法①非水洗式(ナチュラル )

読んで字のごとくほとんど水を使わずに精選を行う方法が非水洗式です。コーヒーの生産大国であるブラジルを始め、エチオピアやイエメンなどで用いられています。

4つの方法の中で作業工程が最も少なく単純である点が特長です。大まかな流れは、粗選別の後に天日干しやドライヤーによる乾燥をおこない、最後に脱穀を実施します。シンプルな工程なため設備投資を最小限にでき、コストを抑えられる点もメリットです。

一方で、天気に左右されやすいというデメリットがあります。水含量が多いため乾燥に時間を要する点、脱穀を終えるまで未成熟の生豆を除外できない点もデメリットです。

味わいは、酸味が穏やかで、非水洗式独特の風味がするとされます。果実の成分が乾燥中に種子へと移り、ナッツのような香りと甘みを楽しめるとされます。

コーヒーの精選方法②水洗式(ウォッシュド)

コーヒーチェリーを水洗いすることによって種子のみを取り出す精選方法が水洗式です。中南米やカリブ海諸国、アジア、アフリカと、世界中の多数の地域で用いられています。

果肉の除去とパーチメントの除去が別々におこなわれる点が特長です。果肉を除去した後の状態をパーチメントコーヒーと言いますが、表面にはミューシレージと呼ばれる粘着質がついており、これを取り除く必要があります。ミューシレージリムーバーと呼ばれる専用機械を使う方法と、発酵槽に入れて酵素と微生物によりミューシレージを分解する方法が、主な除去方法です。

大量の水を使ってきれいな生豆を作りやすいというメリットがあります。一方、大量の水を使用するための設備や環境を整える必要があり、排水を原因とする汚染リスクの対策も必要となる点がデメリットです。

雑味が少なく、クリアな味わいを楽しめるとされます。

コーヒーの精選方法③パルプドナチュラル(ハニープロセス)

水洗式と非水洗式の中間にあたる精選方法がパルプドナチュラルです。また、中米を中心にハニープロセスと呼ぶ地域もあります。ブラジルで開発された方法であり、よく見られるのはブラジルやコスタリカです。

水を用いてウォッシュドと同じように果肉の除去を行いますが、ミューシレージがついたままのパーチメントコーヒーを乾燥させる点が最大の特長です。ミューシレージをどの程度除去するかで、レッドハニーやイエローハニーなどの種類があります。

果肉の除去の時点で未成熟果実を排除できるので非水洗式にくらべ均一感のある生豆が精選でき、水洗式に比べ水の使用量が減るのでコストカットできる点がメリットです。

やさしい酸味と豊かな甘みを楽しめます。

コーヒーの精選方法④スマトラ式

インドネシアのスマトラ島などで見られる精選方法がスマトラ式。パルプドナチュラルと同じく果肉の除去を行い、ミューシレージのついたパーチメントコーヒーにします。続いてパーチメントコーヒーの乾燥を行いますが、十分に乾燥しきらないうちに脱穀するのが特長です。雨期でなくても降水量の多いスマトラ島は乾燥に時間がかかり、そうした土地柄が精選方法に影響しているとされます。

スマトラ島で収穫される人気のコーヒーと言えばマンデリン。アラビカ種のコーヒーの一種ですが、マンデリン特有の味わいもスマトラ式の精選方法によるものと言われます。生豆の状態で乾燥されるため、見た目は独特の深い緑色です。

やさしい酸味と濃厚なコク、広がる香りの余韻が楽しめます。

3.コーヒーの精選に関連するワード

精選の言葉とともに、コーヒー愛飲者によく使用されるキーワードを解説します。一つ一つの工程や製法を知るとよりコーヒーの楽しみ方が広がりますよ。

乾燥(天日乾燥・機械乾燥)

精選した生豆は、次の工程で乾燥をします。主な方法は、太陽の力を借りた天日乾燥と機械乾燥ですが、併用される場合もあります。

・天日乾燥(サンドライ)
レンガやコンクリートで作られた乾燥場、もしくは地上1m程度の高さにネットを張りその上で乾燥させます。伝統的な方法ですが日射量に左右され、品質のばらつきが生じうる点がデメリットです。
・機械乾燥(マシンドライ)
専用の機械で熱風を出し乾燥させます。地理的な条件や天候に左右されにくい一方、初期コストを要する点が特長です。乾燥段階に応じた熱風量調節が求められます。

上記の方法により乾燥させることで、最終的なコーヒーチェリーの水分含量は1/6~1/8程度になります。各段階の水分含量は次の通り。

コーヒーチェリー:60~80%
パーチメントコーヒー:50~60%
乾燥後の生豆:10~13%

乾燥が足りないと微生物などによるダメージ、また乾燥しすぎると割れや欠けた生豆の増加の原因となり、適度な乾燥が必要です。そのほか乾燥速度も大切で、水分含量に応じた乾燥速度を維持するため熱源の調節も求められます。

脱殻

乾燥後のドライチェリーやパーチメントコーヒーから種子を取り出す工程が脱穀(だっかく)です。脱穀機という専用機械を使用し、脱穀機によっては脱穀後に研磨をかけるものもあります。

適切な乾燥が実施されていることが前提です。水分が多く残っているとやわらかい生豆が破れたような状態になり、水分が足りなくなっていると生豆が割れやすくなってしまいます。生豆をを傷つけないよう、生豆にかかる負荷の調節も重要です。

ハニー製法

精選方法の3つ目で紹介したパルプドナチュラル。またの名をハニープロセスと言いますが、はちみつをイメージさせる香り豊かなコーヒー豆がつくられるとされています。

ミューシレージのことを中米ではミエルと呼び、ミエルははちみつの意味もあることから、ハニープロセスを用いてつくられるコーヒー豆がハニーコーヒーと呼ばれるようになりました。コーヒーフレーバーのオリジナリティを好む市場向けに、中米を中心に広がりました。

4.コーヒーの精選の違いを楽しもう

コーヒー豆が私達の手に届くまでには、栽培から流通まで多くの過程がありますが、精選はコーヒーの味も左右する大事な工程です。精選方法の違いは一般にはあまり知られていませんが、精選を知ることでコーヒー豆そのものの特長をより深く理解できます。精選の知識を生かして、新しいコーヒー体験を楽しんでみませんか。

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