珈琲人名鑑

個人店だからできる方法で
コーヒーの楽しみ方を広げたい

珈琲豆 新井商店店主 新井弘之

長野県長野市で優しい酸味のコーヒーや希少品種を扱う、珈琲豆 新井商店。自家焙煎で作るコーヒーを通して、それまで口にする機会が少なかった味とその魅力を地元のお客様に伝え、コーヒーの新たな選択肢を提案している。そこには、かつて大手コーヒー企業に勤めていた店主、新井弘之氏ならではの考えがあった。

大手企業で培った経験を活かし、地元で自家焙煎店を創業

新井商店の店主、新井弘之氏とコーヒーの出会いは幼い頃。親がコーヒーを愛飲していたということもあり、子供の頃から身近な存在だったという。本格的にのめり込んでいったのは学生時代。アルバイトしていた飲食店が大手コーヒー企業の製品を採用しており、その営業担当と親しくなった縁で、1992年、同社に入社。その後、22年間勤め上げた。

2014年、長野に戻った新井氏は、自家焙煎コーヒー店、珈琲豆 新井商店を開業。前職時代に培った生豆の仕入れ、焙煎、流通などの知識と経験を生かし「これからは個人店でしかできない方法でコーヒーの魅力を伝えたい」と新たな一歩を踏み出した。

本来コーヒーが持つ美味しい酸味を伝えたい

長野では中深煎りや深煎りのコーヒーが主流だが、同店は、あえて甘酸っぱくフルーティーなコーヒーを提供している。それは「消費者の酸味への誤解を解くため」と新井氏は語る。新井氏が前職時代に課題と感じていたのは、消費者に植えついた「酸味=嫌な酸っぱさ」という誤解。本来、高品質のコーヒーは甘さを伴う酸味を持ち合わせているが、大半の消費者は劣化したコーヒーからでる、ただ酸っぱいだけの酸味のイメージを持ってしまっている。前職時代に払拭することができなかったこの誤解を解くため、自らの店ではコーヒーが持つ酸味の魅力を伝えたいと考えている。

同店では酸味のイメージを一新させるため、積極的に試飲を勧め、コーヒーが持つさまざまな酸味の種類を、レモンティーやベリー、ワインなど、身近な食品に例えながらわかりやすく伝えている。「多くのお客様は酸味が苦手なのではなく、劣化からくる酸味の悪い印象が強いだけ。コーヒーが本来持つ酸味の美味しさを知れば、コーヒーを選ぶ時の選択肢を広げられると思っています」。

価値ある選択肢を提供するため、希少品種も取り扱う

前職の大手コーヒー企業ではできなかったことを、自身の店で体現する新井氏。ゲイシャやコピ・ルアクなど、価格が高く、欠品の恐れがある希少品種を取り扱っていることもそのひとつだ。

「他の生豆と比べれば10~20倍以上の値段が張りますが、価格が高くても満足できる1杯を求める人に、価値ある選択肢を提供したいと思っています」。ゲイシャは近年の人気で限られた量しか入手出来ないため売切れ御免、コピ・ルアクは100g単位で受注生産している。

焼き上がりを「香り」で判断
香りだけで味が推測できます

焙煎機に鼻を近づけ、香りで焼き上がりを判断

ほぼ全てのコーヒー豆を、浅煎りから中煎りに仕上げている新井商店が使用しているのは、3キロの直火式焙煎機だ。一般的に直火式は火力が安定しないため焦げやすく、浅煎りには不向きだといわれている。しかし、新井氏にとっては「火力の強弱が焙煎に直接反映されるので、微調整しやすい」とのこと。また、排気ファンの回転数を調節出来る機能やバーナーの数を増やすことで、繊細な熱量のコントロールができるよう焙煎機をカスタマイズしている。

どのように焼き上がりを見極めるのか問うと「香りだけで判断しています」と、意外な答えが返ってきた。新井氏が焙煎する時に印象的だったのが、焙煎機から生豆を取り出すテストスプーンの側ギリギリに顔を近づけること。コーヒー豆の色を見ているのかと思いきや、香りを嗅いでいるというのだ。「前職時代の2003年、生産地研修で滞在したコスタリカでは、多い日には約150ロットのサンプルを焙煎してはカッピングをしていました。その成果か、香りをかげば味のイメージがつくんです」。べストな香りを感じた瞬間に、釜からコーヒー豆を取り出している。

季節によって変わる人の味覚を意識したブレンドも提供

生産国・農園・精製法・グレードなど、情報に透明性があるスペシャルティコーヒーをストレートでは約10種類扱っている新井商店だが、季節に合わせて1商品だけオリジナルブレンドを販売している。夏はナチュラルとウォッシュドのエチオピアをブレンドした爽快な飲み心地の「涼味」。冬にはケニアをメインに使用し、やや重厚感のある味わいが特徴の「雪の華」など、年間を通して6種類のブレンドを作っている。「季節によって人が欲する味覚は変わります。料理やスイーツと同じようにコーヒーも、季節に合わせて変えるという楽しみ方を知ってもらえたら」とのこと。

大手コーヒー企業での経験と知識を元に、個人店にしかできない価値を次々と体現する新井氏。酸味も希少品種も季節も、全てはコーヒーを楽しむための一要素。新井商店に来れば、コーヒーの新たな一面に出会えるだろう。

Product商品詳細

珈琲豆 新井商店エチオピア モカ ナチュラル イルガチェフェG1

(100g)800円(税込)

  • 価格は取材時点のものになります

エチオピアのコーヒーのなかでも最もグレードの高いG1の生豆を使用。コーヒー豆が持つ個性的な味を引き出した、やや浅めの中煎りで焙煎。よく熟したグレープのような爽やかな甘さと、赤ワインのような酸味があり、柔らかく滑らかな口当たりが特徴。

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Company会社情報

会社名 珈琲豆 新井商店
住所 380-0803 長野県長野市三輪10-4-10 
電話 026-217-1012
FAX 026-217-1012
営業時間 11:00〜19:00
定休日 水曜日
HP http://arai-coffee-shop.ocnk.net/
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