珈琲人名鑑

進化し続けるパイオニア精神
そのDNAを受け継ぐ開発者

株式会社 アートコーヒー研究開発室 第一チーム 柚木光

進化論を著したダーウィンは「生き残る種は強者でも極めて賢い者でもない。変化に最も柔軟に対応できる者だ」と説いた。アートコーヒーも創業からのパイオニア精神を大切に、時代とともに変化しながら生き残ってきたコーヒー卸の大手だ。そのDNAを受け継ぐ商品開発者、柚木光氏に話を伺った。

味覚は芸術、コーヒーを大衆の嗜好品として広めたパイオニア

“味の芸術”アートコーヒー。昭和生まれなら、街の喫茶店に置かれた赤い看板の言葉にノスタルジーを感じるだろう。この社名に込められた意味は1934年の創業に遡る。創業者である若林秀雄氏は、希少な嗜好品であったコーヒーを多くの人に味わってもらいたいと、同社を創業。トルストイの著書にあった言葉「味覚芸術こそ最高の芸術」から社名をアートコーヒーと名付けた。

コーヒーを気軽に楽しめる嗜好品にしたいというパイオニア精神は、社史85年のなかで発行された広報誌「アート誌」でも見ることができる。なかでも1960年代に開発し、特許も取得した「コーヒーシェーカー」はとてもユニーク。容器内に濾過用のペーパーフィルターをセットして、コーヒー粉末と熱湯を入れ、好みの濃さになるまでシェイクして抽出するという画期的な器具だった。そんなパイオニア精神は今でもDNAとして社員に受け継がれており、「他にないものや、新しいものを生み出すということは常に心がけている」と、商品開発の若きホープである柚木氏は語る。

瑞々しい女性の感性でアートコーヒーの味を手がける

柚木氏が食品の研究分野を志し、アートコーヒーに入社したのは2011年。現在入社9年目、商品開発を一手に任されている若手のホープだ。創業当時からのアットホームな社風で、若手も自由闊達に意見を交わせる環境が気に入っている。

担当する分野も幅広く、工業用原料やコーヒーエキスを作ることもあれば、業務用から一部小売も担っている。具体的には生豆を選ぶところから、ブレンドの配合、焙煎度合い、パッケージまで、お客様に届くまでの一連の業務を一貫して担当しているというから驚きだ。

また同時に、商品開発においては顧客の生の声を聞くことも欠かさない。柚木氏の元には営業担当の同僚が毎日足を運び、また柚木氏も営業担当と取引先を周り、現場の要望を直接吸い上げるようにしている。こまめな各部署との情報交換は、同僚とのランチの息抜きでさえも闊達に行われていると笑う。

アートコーヒーのDNA
後継者達が作り上げた新定番

アートコーヒーのスタンダードを作る一大プロジェクトに参画

アートコーヒーが創業80年を迎えるにあたり、打ち出した新たな戦略。それは外食産業や飲料メーカー向けが主体の販路から、さらに一般家庭用にも販路を広げるために、アートコーヒーの新たなスタンダードを作るというリブランディングを含めた一大プロジェクトだった。柚木氏は商品開発担当として、その中心メンバーに抜擢された。

柚木氏と参画メンバーが考えたのは、数字を使って味覚をわかりやすく示したブランドを作ることだ。開発の基準においたのは「ART5」というコーヒー。これは長年の顧客である喫茶店オーナーや取引先に愛され続けてきたコーヒーの特徴をベースに、新時代にふさわしいコーヒーとしてバージョンアップ。風味の基準となる真ん中に「ART5」をおき、番号が小さくなると華やかですっきりとした風味に、大きくなるとふくよかな香りと芳醇な風味になる「ARTスタンダードシリーズ」を生み出した。現在ある全9種が揃うまでにかかったのは3年半。同社にとっても柚木氏にとってもビッグプロジェクトとなった。

地球環境や生産者に配慮したコーヒーをスタンダードに

もう一つ、スタンダードシリーズを開発する上でこだわったのは、9商品すべてに「サスティナブル認証」を付けることだった。企業理念で謳っている「お客様や社会、そして地球との豊かな共生の実現」のため、全ての商品で有機JAS認証、フェアトレード認証、レインフォレスト・アライアンス認証の3つの認証のいずれかを取得している。

また、工場から出る廃棄物についても積極的な再利用を促進している。オリジナリティある取り組みとしては、工場から出る焙煎時のシルバースキン、粉砕時にでる微粉すべてを、牛の寝床として使ってもらうために八王子郊外の牧場に提供していることだ。牛の快適さだけでなく、コーヒーの消臭効果で近隣からの臭いの苦情がなくなったという。

多様化するコーヒーの消費者に寄り添う商品開発

商品化にあたり、パッケージの細部までこだわり尽くして世に出した「ART スタンダードシリーズ」。開発している時は楽しく、出来上がった時の喜びも格別だったそうだ。そんな柚木氏に今後のコーヒー業界の展望と目標を尋ねた。

「今は喫茶店や外食チェーン店、コンビニエンスストアをはじめ、様々な場所で様々なコーヒーが提供される時代となり、コーヒーの飲まれ方は多様化しています。『ART スタンダードシリーズ』を作って、指針のようなひとつの基準ができたので、ここからはさらにコーヒーの産地や生豆の焙煎度、風味や価格帯など開発の幅を広げて、さらにお客様にご満足いただける商品を増やしていきたいですね」。

彼女のしなやかな感性のなかに80余年、世の中の変化に対応し生き抜いてきたアートコーヒーのDNAが確実に息づいているのを感じた。

Product商品詳細

株式会社アートコーヒー「ART5 スタンダード・ブレンド」ART スタンダードシリーズ

(150g)645円(税込)

  • 価格は取材時点のものになります

アートコーヒーが創業当時から愛され続けているコーヒーを新時代に向けてアレンジした、美味しいコーヒーのスタンダード。「ART5」を軸に数字が小さいと酸味があって華やか、大きいと芳醇でふくよかな味わいが楽しめるコーヒーとなっている。ART5は調和のとれた繊細な味わいに仕上げている。

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Company会社情報

会社名 株式会社 アートコーヒー
住所 100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル4階
電話 03-6860-1631
FAX 03-6860-1632
営業時間 8:30〜17:30 
定休日 土、日、祝日
HP https://www.artcoffee.co.jp/
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