イチオシ情報

珈琲人名鑑

時代のニーズを見据え、
新しい挑戦を続ける

麻布タカノ 株式会社代表取締役 鷹野孝雄

オーガニックコーヒーや紅茶の専門商社である麻布タカノ。戦後まもなく業務用コーヒーの製造・販売で創業したが、今から30年ほど前に一般消費者向けの事業にシフト。そして現在は、オーガニックコーヒーを中心とした商品の企画・販売を行なっている。なぜ、オーガニックにこだわるのか? 代表取締役の鷹野孝雄氏にその理由を聞いた。

喫茶店ブームに先駆け、業務用コーヒーの販売を開始

麻布タカノの前身、タカノ珈琲商会が創業したのは、戦後間もない1950年のこと。当時はまだモダンな飲料であったコーヒーと紅茶に先代の鷹野栄治郎氏が目をつけ、業務用コーヒー、紅茶の製造・卸売業を始めた。1960年頃に空前の喫茶店ブームが起こると、その後しばらく順風満帆な時期が続いた。

通販が切り拓いた家庭用コーヒー事業の道

栄治郎氏の息子であり、現在、代表取締役を務める孝雄氏が入社したのは、喫茶店ブームも落ち着いた1978年。その数年後には、低価格・高回転型のコーヒーショップが登場する。喫茶店業界に転換期が訪れるとともに、会社の事業にも陰りが見え始めてきた。

「このままでいいのか?と入社してすぐに感じていましたね」と語る孝雄氏が考えたのは、一般消費者向け事業への転換だった。しかし、当時の家庭用コーヒーは大手メーカーの独占状態。新参者が商品を作ったところで、そう簡単にはスーパーの棚に並べてもらえない。そこで目をつけたのが、通販だった。「業務用食器の販売をしていた先輩が、一般消費者向けの商品を通販で売ったら、それが飛ぶように売れたんです。これはコーヒーや食品でもいけるんじゃないかな、と」。

そうして生まれた初めての家庭用コーヒー「ザ カフェ・マイルドブレンド」を生協の宅配用に販売したところ、好調な売れ行きを記録。そこから、一般消費者向け商品の企画・販売に舵を切ったのだ。

美味しくて安全なコーヒーを
もっともっと広めていきたい

最初のオーガニックコーヒーは3種類

現在、麻布タカノで扱うコーヒー商品は18〜19種類。そのうち9種類の商品に有機JASマークがついている。2000年にJAS法が改正されると、その翌年には有機JASマーク付きのオーガニックコーヒーの販売を開始した。なぜ、孝雄氏はいち早くオーガニックコーヒーに目をつけたのだろうか?

「取引先の紅茶サプライヤーから、オーガニックの紅茶を紹介されたことがきっかけでした。当時まだ日本ではオーガニック商品の認知は低かったのですが、欧米ではすでに知れ渡っていました。いずれ日本にもそういう時代が来ると思ったんです」

オーガニックコーヒーは、通常の商品と比べて価格が2割ほど高くなるため、販売はなかなか厳しかったと振り返る。しかも、日本ではオーガニック商品への認知が低かったにも関わらず、焙煎度合が異なる3種類の商品を同時に発売したという。まずは1種類を販売し、市場の反応を見てから徐々に商品展開をしていくほうが事業リスクは低いが、そうはしなかった。そこに、孝雄氏のオーガニックコーヒーへの思いがある。

「コーヒーって人によって好みがあるでしょ? たとえば中煎りの1種類しかなかったとしたら、『オーガニックコーヒーに興味はあるけど、深煎りが好み』という人には手に取ってもらえない。だからリスクを負っても、深煎り、中深煎り、中煎りの3種類を出すことにしたんです」

厳しい認証検査を乗り越えて取得したJAS認証

有機JASの認証を得るのも、そう簡単なことではない。コーヒー豆が有機栽培されていることはもちろん、輸送や管理、焙煎などすべての工程において、JAS規定のルールをクリアしなくてはいけない。製造には非常に手間と労力がかかるのだ。

「取引先の焙煎協力工場にも、管理は徹底してもらっていますし、毎年きちんと認証の更新手続きもしています。少しでも安全なものを飲んでもらいたいじゃないですか。それは、コーヒーはもちろん、コーヒー以外の商品の標榜にも掲げています」

現在、コーヒーや紅茶のJAS認証商品を販売する麻布タカノ。そのものづくりのコンセプトには「DIRS(ダース)」を掲げている。D=Delicious(美味しい)、I=Identity(個性・差別化)、R=Reasonable(値頃感)、S=Safety(安心・安全)。孝雄氏がつくり出した言葉だが、美味しくて安全なオーガニックコーヒーや紅茶、そして食品をもっと身近なものにしていきたいという思いが表れている。

安心・安全への挑戦は続く

オーガニックコーヒーの販売を始めて、19年が経とうとしている。「この間に市場の環境は上向いたと思うか」と問うと、「まだまだ」との答えが返ってきた。

「厳しい状況は続いています。でも、これからもオーガニックのアイテムを増やしていって、少しずつ広めていきたいですね。それが私の使命……というと、ちょっと大げさかもしれないですけれど(笑)」

そう謙虚に笑う孝雄氏も今年で65歳。しかし、まだ衰えることのないバイタリティで、チャレンジャーとしての奮闘は続く。

Product商品詳細

麻布タカノ 株式会社オーガニックコーヒー プレミアムブレンド

(180g)756円(税込)

  • 価格は取材時点のものになります

有機JASマークの認証が始まった翌年の2001年に、麻布タカノ初のオーガニックコーヒーとして発売され、以来変わらぬ味を守り続けている。ソフトな酸味の中に上質な苦みと甘みが調和したブレンドコーヒー。同シリーズには中煎りの「メロウブレンド」、深煎りの「クラシックブレンド」もあるが、この中深煎りの「プレミアムブレンド」が一番人気。

この商品を購入する

Company会社情報

会社名 麻布タカノ 株式会社
住所 106-0044 東京都港区東麻布1-8-12 
電話 03-3585-2233
FAX 03-3585-2235
営業時間 8:45~17:45
定休日 土、日、祝日
Mail info@marche-azabu.jp
HP https://azabutakano.jp/
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE