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珈琲人名鑑

祖父から父、そして孫へ
家族で受け継ぐコーヒーと夢

株式会社 鈴木コーヒー取締役 鈴木將隆

1950年に東京・麹町でコーヒー焙煎卸売業として創業した鈴木コーヒー。コーヒーの加工に一早く着手し、コーヒー牛乳やコーヒーエキス抽出の開発など、業界に数々の革新をもたらしてきた。親子3代で受け継ぐコーヒーに懸けた想いを、創業者の孫・鈴木將隆氏に聞いた。

常に時代の一歩先を見据えてきた鈴木コーヒー

鈴木將隆氏の祖父・孝雄氏のもと、1950年に創業した鈴木コーヒー。戦前から木村商店で修行を積んできた孝雄氏は、コーヒー産業や“パンとコーヒー”という欧米の食スタイルの拡大を予見し、東京・麹町でコーヒーの焙煎卸売業を、有楽町で喫茶店を開業した。海外志向が強かった孝雄氏は、積極的に世界各国へ出向き、食文化や最新の産業技術を習得。日本ではまだ知られていない新たな商品の研究開発に熱心に取り組んだという。コーヒーの加工にも一早く着手。コーヒーに練乳を加えた「コーヒー牛乳」は業界に革新をもたらし、爆発的なヒットを生んだ。

その後、孝雄氏は缶コーヒーの原料となる高濃度のコーヒーエキス「コーヒーエキストラクト」の抽出に成功。1962年、国内資本としては初のインスタントコーヒー製造会社・株式会社マックスコーヒーを設立し、大手飲料メーカーへ「コーヒーエキストラクト」の供給を開始した。これこそ、現在も千葉県や茨城県で広く親しまれる「MAX COFFEE」の始まりである。また、インスタントコーヒーを業務用として都内の多くの飲食店に卸し、事業を拡大した同社は、東京のコーヒー文化の発展に大きく寄与した。

世代交代を機に原点回帰、大企業から家業へ

1979年に將隆氏の父・和孝氏へと世代交代すると、和孝氏は原点に立ち帰り、「本当にいいものを自分の手が届く範囲でお客様に提供したい」と、B to BからB to Cへシフトチェンジ。工業用コーヒーの製造は廃止し、1983年にミルハウスコーヒー店の名で、自家焙煎コーヒーの喫茶店としてリスタートした。

「この時に父が掲げたのが『鈴木コーヒーは“家業”である』という理念です。祖父が創業に懸けた意思を受け継ぎながら、弊社のコーヒーを愛してくださる地元のお客様を大切にしています」と、將隆氏。MAX COFFEEブランドを守り、自社のコーヒーを求めてくれるお客様に変わらない味を届けること。それこそ、家業となった鈴木コーヒーの責務だと話す。

“美味しい”は飲む人自身が決めること。
我々は、そのヒントを提供するだけです。

人それぞれ異なる“美味しい”のベースとなるコーヒーを提供

現在、鈴木コーヒーで販売するコーヒーはブラジル、エチオピアなどの4種のストレートコーヒーと、それらをバランスよく配合した「ミルハウス特製ブレンド」など全8種類。すべてミルハウスコーヒー店として再出発した際に2代目の和孝氏が生み出した味だ。焙煎度合いなどを細かくデータ管理し、変わらない味を守り続けているという。

鈴木コーヒーがユニークなのは、“自社が考える絶対的な美味しさ”をお客様に押し付けないということ。「どんな味を美味しいと感じるかは、人それぞれで違います。ですから、飲む方が自分に合うコーヒーをつくり出せる“ヒントになる味”を提供するのが、我々の役目だと思っています」。販売している焙煎豆は客が好みに合わせて8種類を掛け合わせ「オリジナルブレンド」を楽しめるラインナップ。同社がつくるのはあくまでベースだと將隆氏は話す。

先代が築いたブランドを大切に、新たな視点で商品を企画

「弊社のコーヒーを買い求めてくださる方がいることや、『MAX COFFEE』が今なお多くの方に愛され続けていることは何よりの誇りです。先代が築いてきたものを軸に、新たな形で皆様にお届けできるように努めるのが、今の私の仕事です」と語る將隆氏。

現在は、お菓子など、飲料以外でのMAX COFFEEブランドの製品づくりや、他社とのコラボレーション企画など、さまざまな角度から新しい事業に取り組んでいるという。固定概念にとらわれず、広い視野をもってチャレンジするという考えは、祖父・孝雄氏から確かに受け継がれているようだ。

本物の“ミルハウス”をつくりたい、それが家族の夢

最後に、「本物のミルハウスをつくるのが夢です」と語った將隆氏。それは、2代目である父の和孝氏が再起を懸けてミルハウスコーヒー店をオープンした時に漫画に描いた、コーヒーミル型の家のことだ。「いつかこんな家に家族で住むのが夢です。焙煎機や喫茶スペースを備えて、フラッグシップショップにもしたいですね」。孝雄氏から始まった鈴木コーヒーのコーヒーに懸ける夢は、新たな形となってこれからも受け継がれていく。

Product商品詳細

株式会社 鈴木コーヒーミルハウス特製ブレンド

(100g)500円(税込)

  • 価格は取材時点のものになります

鈴木コーヒーを代表するブレンド。香りとコクを重視し、ブラジル、エチオピア、インドネシアをバランスよく配合。1種もしくは、同社の他の商品とブレンドして楽しめるようベーシックな味に仕上げている。完全真空パックのため、長期保存が可能。

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Company会社情報

会社名 株式会社 鈴木コーヒー
住所 102-0083 東京都千代田区麹町2-2 麹町鈴木ビル6F
電話 03-3262-3401
FAX 03-3262-0219
営業時間 9:00~17:00
定休日 土、日、祝日
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