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珈琲人名鑑

身近なコーヒー製品を
影で支える女性コーヒー鑑定士

高砂珈琲 株式会社江間厚子

生豆を仕入れ、焙煎、加工したコーヒー原料を、飲料メーカーや製菓企業などに提供する高砂珈琲。全国で知られるコーヒー製品に数多く携わりながらも、自社名を表に出すことはなく、あくまで黒子に徹している。今回は、同社のJ.C.Q.A.認定コーヒー鑑定士、江間厚子氏にその真意を問う。

1980年代からコーヒー飲料や食品の原料を製造

高砂珈琲の始まりは1946年。町のコーヒー店として、大手メーカーにはできないオーダーメイドのインスタントコーヒーを製造していたことがルーツになっている。現在の高砂珈琲として創業したのは1987年。以来、缶コーヒー、ペットボトル、チルドカップなどのドリンクを手がける飲料メーカーから、コーヒーフレーバーの菓子、アイスクリームを作る製菓企業まで、工業用コーヒー原料の製造会社として、その市場を支え続けている。

自動販売機によって加速した缶コーヒー市場に寄与

わたしたちがいつでもどこでも本格的なコーヒーを楽しめるようになったのは、持ち運べるコーヒー飲料の先駆けとなった缶コーヒーの功績が大きい。その背景に、缶コーヒーの味わいを決めるコーヒーエキスを製造していた高砂珈琲の存在は欠かせない。

その製造方法はこうだ。まず挽いたコーヒー豆に湯を注ぎ、コーヒーを抽出する。その液体を湯の代わりにして、次のコーヒー豆に注ぎまた抽出する。この工程を複数回繰り返すことで超高濃度になったコーヒーエキスが出来上がるのだ。

世界で初めてミルク入り缶コーヒーが発売されたのが1969年。その後、大手飲料メーカーの缶コーヒーが自販機で販売されるようになると、市場は急速に拡大し、各社が本格的な缶コーヒー製造に乗り出した。それは高砂珈琲が成長する上で、大きな転機となったという。

コーヒーが生み出す癒しと活力を
多くの消費者に届けたい

高品質の製品作りを可能にする一貫生産体制

江間氏が高砂珈琲に入社したのは1999年。静岡県にある磐田工場の検査室(現:品質保証室)への配属だった。工場では生豆の受け入れ、焙煎、粉砕やコーヒーエキスと呼ばれる液体への加工に至るまでを一貫して行っている。コーヒーは時間が経つにつれて風味が劣化してしまうため、加工までのタイムラグを最短にすることが、高品質な製品を作る上で重要となる。ゆえに、この生産体制こそが同社の一番の強みだ。

高砂珈琲ではまず、風味・形状・価格など、各社の細かいオーダーに合わせて製品を設計。コーヒー豆は、サンプリング検査を通過して仕入れた世界各国の生豆を、熱風式のゴットホット・ノバと、半熱風式のプロバットの2台で焙煎している。その後、製品に応じてコーヒー豆をブレンドし、レギュラーコーヒーやコーヒーエキスに加工。江間氏が所属していた品質保証室では焙煎度や風味のチェック、理化学検査、微生物検査などを行った上で、各社に発送している。

日本にわずか4名、高砂珈琲を支える女性コーヒー鑑定士

高砂珈琲に入社し、日々業務に従事するうちにますますコーヒーに惹かれていった江間氏。コーヒーを極めようと、2003年にJ.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター2級の資格を取得。1級も2005年の資格発足と同時に取得した。さらに、司法試験よりも合格率が低いと言われるコーヒー鑑定士にも挑戦。「何度も挑戦し、これで受からなかったらもうやめよう!と思った年になんとか合格しました。頑張って良かったです」と、当時を振り返る。2016年4月に東京に転勤、現在は社内外でコーヒー講習会を担当。日本にたった4名しかいない女性のJ.C.Q.A.認定コーヒー鑑定士が、高砂珈琲と日本のコーヒー製品市場を支えているのだ。

これからも影の立役者として

高度な技術と充実した生産体制、そして知識を備えた人材を持つことで確かな品質のコーヒー原料を製造する高砂珈琲。なぜ自社製品を手がけたり、確実にネームバリューとなる取引先や製品名を明かさないのだろうか。

「裏方に徹することで、同業種でもさまざまなメーカーに原料を供給することができ、多くの消費者にコーヒーによる癒しと活力を届けられます。我々が表に出ることが大事なのではなく、ひとりでも多くの消費者にコーヒーの魅力を感じてもらえれば」と江間氏は語る。

日常の中で、何気なく口にしているコーヒー製品にも、美味しいコーヒーを届けたいという想いと品質管理に対する徹底した姿勢が宿っている。日本のコーヒー製品市場の歴史に高砂珈琲あり。時折、その存在を思い出してほしい。

Company会社情報

会社名 高砂珈琲 株式会社
住所 144-8721 東京都大田区蒲田5-37-1 ニッセイアロマスクエア17階
電話 03-5744-0700
FAX 03-5744-0710
営業時間 9:00〜17:30
定休日 土、日、祝日
HP https://www.takasago.com/ja/aboutus/location/takasago_coffee.html
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