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コーヒーの語源は地名?アラビア語?言葉の遍歴を辿って歴史を知ろう

コーヒーを英語で書くとcoffee。発音はカーフィー、カフィーなどです。その語源には諸説あり、発音と似た地名や言葉が由来にあげられます。この記事ではコーヒーの語源を始め、コーヒーの世界的な普及とともに変わっていった言葉の遍歴、また日本での珈琲という字の由来や意味について解説します。

1.コーヒーの語源

コーヒーの語源には、コーヒー発祥の国とされるエチオピアの地名に由来する説、アラビア語のワインを示す単語に由来する説、この二つの説が一般的に知られています。それぞれの説を詳しく解説します。

エチオピアの地名を語源とする説

一つ目のエチオピア説は、エチオピア南西部にある街カファ(Kaffa)が訛ったものとする説です。

エチオピアはコーヒー発祥の地とされる国で、今もコーヒー栽培が盛んです。コーヒーの種類として有名なモカコーヒーは、イエメンのモカという港から輸出されていたためその名がつきましたが、エチオピア原産種も多く含まれています。

コーヒーの語源と言われるカッファでは、古くからコーヒーの栽培が行われていたと言われています。その地名は今も残っており、コーヒー栽培も健在です。

ただし、地名のカファが語源であることを示す明確な根拠は確認されていません。エチオピアやアラブ地域ではコーヒー豆をバンと、コーヒーをバンカムと呼んでいたとされる文献もあります。コーヒーの語源としてカファは有力ではないようです。

アラビア語の「ワイン」を語源とする説

二つ目の説は、アラビア語で古くはワインの意味があったカフワ(Qahwah)が語源とする説です。

現代のアラビア語訳では、カフワはコーヒーという意味になります。ワインとコーヒーではまったく違う飲み物ですが、なぜ意味が変わり、語源となったのでしょうか。

アラブ地域では、興奮作用を持つコーヒーがアルコールの代わりとして飲まれていた時代がありました。アラブ地域はイスラム教が主流であり、飲酒を固く禁じています。そのためコーヒーがアルコールの代わりを果たし、コーヒー普及の一因ともなったようです。今でもアラブ地域ではアルコールではなくコーヒーで飲み会を開催することもあります。コーヒーの語源の最有力説とされています。

2.コーヒーの普及と言葉の遍歴

コーヒーが、発祥の地とされるエチオピアからアラブ地域に普及し、さらにヨーロッパへと広がっていく歴史の中で、コーヒーを示す言葉が変わっていきました。ここでは、コーヒーの歴史と言葉の変遷について解説します。

アラブからトルコへ

コーヒーが、発祥とされるエチオピアからアラブ地域へと渡ったのは7~9世紀頃とされています。長らく興奮作用などを持つ秘薬として扱われていたコーヒーの実は、14世紀頃にイエメンで飲み物としてのコーヒーへと進化しました。さらに15世紀頃からアラブ地域全体に広まりますが、この頃はまだバンカムと呼ばれていたと考えられています。

「カーファ」と呼ばれるようになるのが15世紀頃、焙煎してコーヒー豆を作るようになった頃です。

その後、16世紀頃にアラブ地域からトルコへとコーヒーが広がります。トルコと言えば、独特の道具を用いて淹れるトルココーヒーが有名ですが、コーヒー伝来当時はカーヴェ(Kahveh)と呼ばれていたようです。

トルコからヨーロッパへ

トルコでカーフェとして定着したコーヒーは、その後エジプト、そしてヨーロッパへと普及します。

ヨーロッパで最も早くコーヒーが伝わったとされるのは、イタリアのローマです。さらに1645年、ベネチアにヨーロッパ初となるコーヒー店が誕生しました。コーヒーはカッフェー(Caffé)と呼ばれ、その後ヨーロッパ全土へとコーヒーが普及しますが、各国の呼び方に影響を与えたと考えられます。

例えばフランスではカフェ(Café)、ドイツではカフェー(Kaffee)と呼ばれるに至りました。

ヨーロッパから各国へ

ヨーロッパの各国へと広まったコーヒーは、やがて世界各国に伝わりました。

アメリカでのコーヒーに関する最初の記述が見られるのは、1668年です。当時のニューヨークでは、砂糖やシナモンをくわえて飲まれていたようです。コロンブスによるアメリカ大陸の歴史上の発見後、ヨーロッパからアメリカへの移民が増加するとともにコーヒーも広まっていきました。

3.日本にコーヒーが伝わった経緯と「珈琲」の由来

現代の日本ではコーヒーと呼ばれ、漢字では珈琲と書きます。コーヒーが日本に伝わった当初は、違う漢字も使われていました。日本にコーヒーとその言葉が伝わった経緯と「珈琲」の字の由来や意味を解説します。

日本にコーヒーが伝わるまで

日本の記録にコーヒーが登場するのは、江戸時代末期の18世紀です。当時の鎖国していた日本で唯一、海外へと開かれていた出島に伝わりました。コーヒーは、出島への出入りが許されていたオランダからもたらされたという説が有力です。

オランダ語では、コーヒーはコフィー(Koffie)と言います。アメリカのコーヒーではなくオランダのコフィーが日本におけるコーヒーという呼称の元となったと言われています。

当時の日本人にとってコーヒーは、焦げ臭くてあまり好まれる飲み物ではなかったようです。

コーヒーの当て字

江戸時代当時、言葉を使用するには、漢字を当てる必要がありました。日本に伝わったコーヒーにも、さまざまな漢字の当て字が使用されました。

よく知られている当て字が「可否」です。1888年、東京下谷に誕生した日本初の喫茶店の名前が「可否茶館」です。メニューの記載も「可否」でした。

他にも、可否と同じく音から連想した「可非」や、コーヒー豆の見た目から連想した「黒炒豆」などが使われました。

「珈琲」になった由来と意味

現代のコーヒーの漢字である「珈琲」は、江戸時代末期の蘭学者、宇田川榕菴(うだがわようあん)によって考えられたとされています。その着眼点は、コーヒーという音ではなく、コーヒーチェリーの様子でした。

珈琲の二文字は、それぞれに飾りに関連した意味があります。「珈」は玉の垂れ下がったかんざし、貫くという意味を持つ「琲」は玉が連なった飾りのことです。二文字を組み合わせた珈琲には、玉の連なった髪飾りの意味が込められていたと考えられています。コーヒーノキに赤い小さい実がたわわになる様子が思い浮かぶおしゃれな当て字ですね。

4.コーヒーの語源と歴史に思いを馳せて

コーヒーが発祥の地から世界中に広がる過程で、その呼び方も各国でさまざまな変遷を経てきた歴史を紹介しました。日本における漢字の由来には、音だけでなく意味も含ませた翻訳の良さも感じられます。コーヒーの歴史と言葉の変遷に思いを馳せながら、至福の一杯を楽しんでくださいね。

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